「コミュニティメディア」としてのEDIT LOCAL

2019.3.8 影山裕樹

EDIT LOCALが立ち上がって一年半、これまで少しづつ各地のクリエイティブやまちづくりに関わる人々を紹介してきましたが、今年、そんな各地のプレイヤーをつなぎ、より一層の情報交換を行うプラットフォームを作りたいという思いで、EDIT LOCAL LABORATORYという研究所を立ち上げました。

ウェブ媒体もコンテンツ制作、記事広告などこれまでの方法から、コミュニティを作りそこからマネタイズを行うスタイルが求められています。そこで重要な役割を果たすのがエンジニアの存在です。NewsPicksなどの振興メディアが台頭し、老舗の朝日新聞が好書好日DANROなどの特定のターゲットに絞ったバーティカルメディアをスタートさせるなど、コンテンツ制作の中心であった編集畑の人材と、エンジニアが協働し単に情報発信するだけでなく特定のコミュニティにリーチさせるメディアを運用するスタイルが業界でも定着してきました。

オンラインサロンとコミュニティメディア

そんな中、インフルエンサーや著名人の求心力に集まる人々をコミュニティとして囲い込み、そこでマネタイズを行うオンラインサロンがブームになってきています。しかも、いわゆるオンラインサロンのように属人性に頼り参加者のモチベーションを担保するようなスタイルのサービスだけではなく、属人性から少し離れてテーマ性を強調したSUSONOのようなメディアとオンラインサロンの合いの子のようなサービスも登場し始めました。

こういう属人性に頼らずテーマ性やコミュニティの質づくりを重視するようなタイプのサービスは、すでにある/あるいはこれから生まれつつある新しいコミュニティを育むためにメディアという手法を使っているという意味で、「コミュニティメディア」とか「メディア・コミュニティ」と呼んでもいいかもしれません。

もちろんFacebookや古くはmixiのようなプラットフォームもこれまでありましたし、これらのSNSは趣味関心の合う集団のつながりを促進するためのサービスでした。ところが、今はメディア自体がある種のターゲットを絞り、その集団のつながりを促進するサービスが増えている印象を持ちます。メディアはこれまでのマスメディアのように、大衆に均一に情報発信を行うだけではダメ。受け手と発信者との相互交流のための”乗り物”になることがこれからのメディアの向かうべき方向なのは確かだと思います。

それは、これまでの東京中心のメディア業界から遠く離れて、人口=読者数も少なく人材も少ない地域に根ざしメディア業に従事する人々から学んだことでもあります。一方的な情報発信が価値観が多様になった現代社会にフィットしなくなっているからこそ、ローカルでのメディアづくりはその方法も多様になってきているのです。

『ローカルメディアのつくりかた』『ローカルメディアの仕事術』(共に学芸出版社)

ローカルにおけるメディアやクリエイティブに必要なコミュニケーション力

では、ローカルでメディアやクリエイティブ事業に携わる人々を紹介するEDIT LOCALはどんなメディアであるべきか。それはこれまで僕がローカルメディアの取材を通して見てきた、各地のプレイヤーの「地域内の異なるコミュニティをつなぐ」技能やノウハウを、地域別に共有し互いに高め合うアソシエーションのようなメディア像でした。

先日、半年間のワークショップ期間を終えてプレゼンテーションを行い、二年目への準備がスタートしたKOBE MEMEでは、神戸・長田で多様な事業を行う起業家たち、六間道商店街で介護サービス付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を運営する首藤義敬さんを始めとした強力なメンター体制でプロジェクトを進めてきました。

KOBE MEME公開プレゼンテーション

このプロジェクトに誘ってくれた、クリエイティブ・エージェンシー「一般社団法人DOR」の岩本順平さんもそうなのですが、震災を経験し、空き家も多く高齢化という課題を抱えた神戸・長田というエリアで自らリスクを負い事業を生み出していく若手起業家たちに共通しているのは、コミュニケーション能力が異常に高い、ということでした。

まだまだ半年しか通っていないので印象論になるかもしれませんが、長田の飲食店のおばちゃんや、呑んだくれているおっちゃんのキャラは凄まじく濃いです。関東の人間からすると若干引いてしまうようなところもある。そんな人々を相手に、喧嘩になることなくうまく仲裁する技能は、冗談ではなく地域性に裏付けられているような気がしています。

また、よく、クリエイティブの仕事をしているとSlackやFaceBookメッセンジャーなどのサービスを使いこなさないといけない、と言われます。特に地方に行けば行くほど、会うために車で1時間とかかかったりするのでネットサービスのスキルは不可欠です。ただ、メールやSNSだけでは伝わらない”気持ち”は直接会って確かめないといけません。

一般的にこうした情報処理能力は高等教育を受けた高学歴な人材が身に着ける技能というイメージがあり、出版やメディア業界では学歴主義がいまだに蔓延している印象があります。当然そこには、適切な言語運用能力も求められています。ただ、こうした効率重視の情報処理能力・言語運用能力に長けているからといって、地域内の価値観の合わない人々(労働者や高齢者コミュニティ)とまともにコミュニケーションを取れるわけではありません。

KOBE MEMEのインプットプログラム、下町芸術大学の講座でまちあるきしている様子

EDIT LOCALが育むべきコミュニティ

まったく異なる考え方の人と話し合うスキルは、意外と夜の仕事の経験者が持っていたりします。実は僕が最近面白いと思っている人の多くは、大卒・院卒ではなく、高卒で夜の仕事を経験していたりします。二次元平面上のメディアづくりにおいては、例えば対談記事を作るにしても「話の合う人」をセッティングする場合が多い。しかし話が合う人が互いを承認しあった記事ほど、結論の予測できるものはない。同じテーマについて話すにしろ、話が通じるギリギリのラインで意外な組み合わせを考えるのがこれまでのメディアに携わる編集者の技能でした。

一方で、地域における立体的な編集では、もっと価値観の合わない人々をつなぐ腕力が求められます。真にLOCALをEDITする人たちは、従来型のメディア人材よりもっと人間的に深いところで仕事をしているという気づき。それがEDIT LOCALを続けている僕自身のモチベーションでもあります。

先述の問いに戻ります。仮に「これからはコミュニティメディアの時代だ!」と言ってみる。そこでじゃあEDIT LOCALはどんなコミュニティを育むべきか。それは、マスメディア全盛の時代に僕たちに植えつけられた非対称な人間と人間の関係、たとえばホワイトカラーとブルーカラー、芸能人と一般人、専門家と大衆……(ここに今なら、インフルエンサーとフォロワーを付け加えてもいいかもしれません)、ではなく、より深い人間性という基盤に立って、地域内の異なるコミュニティをつなぐ多様なアプローチや経験を互いに対等に尊重しあうコミュニティです。

なので、EDIT LOCAL LABORATORYでは会費を月額ではなく年額にしています。ほぼ、儲けは出ません(というか、マイナスになりそう……)。イメージとしては、みんなで少額を出し合って、部活的に地域の人と人をつなぐ術を交換しあうプラットフォームです。これも、LABORATORY構想を一緒に考えてきた編集者の江口晋太朗さんと共に入会している地域デザイン学会のような学会コミュニティを参考にしています。

コミュニティづくりを目的とした団体は古くからあった。確かにインターネットが発達しネットサービスをフル活用するオンラインコミュニティに比べて効率の悪さが目立つ学会や協会などの団体もアップデートは必要かもしれません。ただ、互助的に少額を出し合って最小限の事務局機能だけで、あるテーマを深めていこうという団体の姿勢は、属人性にひっぱられすぎたオンラインサロンブームとは別の角度から、コミュニティづくりを進めるヒントになるに違いない。詳しいことは江口さんのコラムを待ちますが、そんなことを考えて立ち上げたのがEDIT LOCAL LABORATORYです。ご興味ある方はぜひ、トップページのLABOボタンをクリックしてみてください。

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ライタープロフィール

影山裕樹(Yuki Kageyama)

編集者、合同会社千十一編集室代表。著書に『大人が作る秘密基地』(DU BOOKS)、『ローカルメディアのつくりかた』(学芸出版社)などがある。全国各地の地域プロジェクトに編集者、ディレクターとして多数関わる。青山学院女子短期大学非常勤講師、路上観察グループ「新しい骨董」などの活動も。2017年、本づくりからプロジェクトづくりまで幅広く行う千十一編集室をスタート。

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