はじめに ー「ブックツーリズム」とは何か
こんにちは。東京都豊島区・上池袋にあるシェアアトリエ/コミュニティスペース「くすのき荘」メンバーの藤田と申します。普段は都内の役所に勤める一方で、読書会やシェア型本棚オーナーの交流など、本を介した場づくりを行なっています。
皆さんは「ブックツーリズム」という言葉をご存知でしょうか。これは「本を目的とした旅」のことで、さまざまな形態があると言われています。たとえばイギリスでは出版・書籍関係者が集まる「ロンドンブックフェア」が開かれ、世界中から人が集まる“本の見本市”として知られています。また、好きな作家のゆかりの地を巡る旅や、有名作品の舞台となった場所を訪れる「コンテンツツーリズム(いわゆる“聖地巡礼”)」もあります。さらに、その土地にある本屋や図書館を訪れる旅も「ブックツーリズム」に含まれます(橋爪 2021, pp.22-24)。
私が考える「ブックツーリズム」の魅力
私は、こうした“本に関わる土地や場所を巡る旅”は、その土地ならではの歴史や文化、いわゆる「ローカルなもの」を体感するのにとても有効だと感じています。そこで今回は、私なりの「ブックツーリズム」を、実際に行った旅を例にお伝えしたいと思います。
旅の準備
(1)旅先の歴史と地理を知る本を選ぶ
私の場合、まず行く都道府県が決まると、その土地の歴史や地理の本を入手します。今回は兵庫県神戸市に旅行することが決まっていたので、「神戸」に関する本を事前に購入したり、図書館で借りたりしました。
今回の神戸の旅では、神戸の復興の歴史が詳しく書かれた『神戸 戦災と震災』(村上しほり、ちくま新書)、神戸に長く在住している著者行きつけのお店などが書かれた暮らしのエッセイ『神戸、書いてどうなるのか』(安田謙一、ちくま文庫)、街の地形と歴史を分かりやすく解説するNHK人気番組を書籍化した『ブラタモリ 12 別府 神戸 奄美』(NHK「ブラタモリ」制作班 (監修)、KADOKAWA)の3冊を事前に入手し、移動中の新幹線や電車で読むようにしました。また、旅先が県庁所在地の場合には『県都物語 ― 47都心空間の近代をあるく』(西村幸夫、有斐閣)が事前学習におすすめです。この本は、47都道府県ごとに県庁所在地の道路や都市空間がどのように作られたのかを解説しており、読んでおくと街の理解度が高まります。ただし少し大きめの本なので、必要箇所だけコピーして持参するのが良いです。
(2)訪れたい本屋・図書館をリストアップする
事前に行きたい本屋や図書館も調べておきます。地元の図書館だけでなく、店主の個性が表れる「独立系書店」や「古本屋」、一箱本棚オーナーの本が並ぶ「シェア型本屋(シェア型図書館)」もチェックするようにしています。
現地での過ごし方など
(1) 本屋と図書館を巡る
実際に現地に着いたら、本屋(図書館含む)巡りをします。今回の神戸の旅では、神戸市中心部の元町商店街近くにある「1003(センサン)」「本の栞」といった独立系書店を回りつつ、「花森書林」「神戸古書倶楽部」「神戸元町みなと古書店」といった古本屋も巡りました。また、「神戸市立中央図書館」も訪れて、神戸のローカルな歴史書が並ぶコーナーを巡り、じっくりと本を読ませていただきました。
(2)喫茶店、読書会、旅の記録
本をいくつか購入した後は、できればその街に昔からある喫茶店(又は地元の居酒屋)に入り、店の雰囲気を感じながら本を読むことをおすすめします。私は今回、書店巡りをした翌日の朝に、1952年創業の神戸元町の喫茶店「エビアンコーヒー」でモーニングをいただきながら読書を楽しみました。
また、もし都合が合うならば、現地で開かれる読書会に参加してみるのもおススメです。今回、神戸では都合が合わず参加できませんでしたが、以前、京都や福岡に旅行した際には旅先で開催された読書会には参加したことがあります。本を介して、地元の人達と語り合う得難い体験となりました。
そして、旅が終わった後は、Instagramやnoteに訪れた場所を記録として発信しています。「ブックツーリズム」の記録を自分なりのアーカイブとして残しておくことは、後から旅を振り返る楽しさに繋がります。
おわりに ー本を通してローカルを感じる
事前に旅先の歴史や文化を調べて想像を膨らませること。旅の最中は本屋の本棚からその店の思想や考え方に触れたり、図書館でその土地の歴史を調べること。そして、その土地に昔からある喫茶店等の地元のお店でじっくりと手に入れた本をめくること。読書会で地元の人と本を語ること。最後に、旅の記録を自分なりのアーカイブとして残しておくこと。こうした工程を重ねて旅をすると、その土地の生活や歴史といったいわゆる「ローカルなもの」を体験したような感覚が残ります。それが、私が「ブックツーリズム」をおススメする理由です。
(参考文献)
橋爪紳也(2021)『ブックツーリズムの原点、江戸時代の大阪からヨーロッパまで』
(礒井純充・橋爪紳也・岸政彦・吉成信夫・土肥潤也・森田秀之・原田マハ・長塚隆・平賀研也・鋤柄大気「ブックフェスタ 本の磁力で地域を変える」まちライブラリー文庫, pp.22-24)